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京都で役者をやっている豊島勇士のブログです。

マイムってなんだ、あるいは今度出演する公演について

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マイムを始めてから、早1年(半)が経とうとしています。
 
この記事は、「マイムってなんだ?」という人にむけて、僕の一年半のマイム体験を記すことで少しでもマイムのことを知ってもらい、そして来月出演するマイム公演「かつての風景」の紹介をして、観に行こうかな、という人を少しでも増やす、ということを目的に書きました。長文ですが、ご了承ください。
 
「かつての風景」の紹介だけ読みたい方は、記事の中ほどからお読みください。
 
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僕のマイム体験

 
僕がマイムを始めたきっかけはこの動画でした。
 
 
2013年10月。
そのとき初めて見たのではなく、おそらく2回目くらいだったと思います。

 

「この人のようになれば、自分のやりたい舞台ができるかもしれない」

 
アニメーションのような舞台をしたい、となんとなく考えていた僕にとって、実体化するための手がかりをつかんだような気持でした。
 
それからネットでマイムについて調べ始め、マルセル・マルソーに行き着きます。
 
 
「あれ?これ…なんだこれすごい」
 
それまでマイム(当然パントマイムの略と思っていた)といえば無対象演技(ないものがあるように見えるテクニック)だと思っていたところに、全く違う、未だになんといってまとめてよいかわからない表現がなだれ込んできました。
 
「あばばばばば」
 
マイムについてさらに調べていくと、今関西には「いいむろなおき」という人がいるらしい、と知ります。慌てて舞台を見に行くと、たった30分の作品で、とんでもない衝撃を受けました。
 
人差し指がビッグバンになるんですよ。
地球の歴史が30分で一往復してるのに、
全然「抽象的」な舞台じゃなく、その瞬間瞬間が目の前で「現実」な感じがあって。
想像できますか。
 
これは「手」というちょっと抽象的な作品ですが、やっぱりイメージはすごく具体的だと思います。
 
衝撃を受けた僕は、さっそく何かやってみたいと思いました。
もともともっていた「パントマイムのすべて」という本をもとに、見よう見まねで練習を始めます。でっかい一畳分もある姿見を買ったのもこのころです。
 
そして、学生最後となる2014年の3月、西部講堂の裏手にある小部屋で30分ほどのマイム公演をしました。公演と呼べるほどの規模ではなく、いろんな意味で「やっちまったな」というものではありましたが。
 
2014年4月からは、「いいむろなおきマイムラボ・セカンド」7期生として、いいむろさんが教えるマイムの稽古に参加しはじめます。そこからは、怒涛の一年でした。
 
自分の体がどう見えているのか、見せたい形にバシッときめられるよう「基準」をつくっていく作業、体の中心でみせるためのシステマティックなメソッド、マルソーのつくった習作の抜粋、キャラクター性の強い複数人でのコント、クラウン(ピエロ)のよ うなドタバタ、ブラックユーモアな小作品…などなど。
 
本当にいろんなことが課題になり、体が少しずつ動くようになっていく一方で、その舞台で大事なことはなんなのか、何をどうやって見せていくのが「肝心なこと」なのか、そこがひたすら問題になっている稽古場でした。
 

「かつての風景」

 
その稽古場で出会ったのが、来月出演する「かつての風景」で共演させていただく
岡村渉さん、菅原ゆうきさん、黒木夏海さんです。
 
岡村渉
渉さんは、僕がマイムに興味をもったきっかけであり、そのころからあこがれの存在でした。
 
動画で見ていた渉さんがマイムラボセカンドの稽古場にいるのを見つけた時は本当にびっくりしましたが、しかし冒頭に掲載した動画が今見ると色あせて見えるくらい、すごいスピードで進化し続けている人です。
 
今回の舞台では、動画のような「パントマイム的な」演技ではなく、なんというか「邦画的」な質感の豊かな演技をされています。
 
パントマイム的なわかりやすさ、面白さ、そしてさらに質感まで同時に実現する演技は、「自分はなんでこれができないのかな…?」と思うほど自然で単純に見えるのですが、自分には一向にできません。
 
菅原ゆうき
菅原ゆうきさんは僕と同い年ですが、マイムラボセカンドではひとつ先輩で、舞台に関してはすでに兵庫県立ピッコロ劇団に所属しそのステージに立っているという、ちょっと恐れ多い感じの先輩です。
 
大きな舞台にいるような存在感があって、向き合っていると僕の存在感もあわせて持ち上げてくれるような感じがします。そのとき舞台でやるべきことをつかんでいて、演技の出力を落とさずにマルチタスクをこなせるひとです。
 
黒木夏海
黒木夏海さんは、僕が生で観たなかで最も感動したマイム作品(いいむろさんは除く)をつくったひとです。「おもいで」というタイトルで、縁側でおばあちゃんが手鏡をみて昔を思い出す、という作品でした。
 
このひとの作品の特徴は、見ていると目がグーッと演者に寄っていってしまうことです。ちょっとした動作に意味があるので、とりこぼすまいと目を寄せていくうちに、気持ちも寄せてしまっていて、もっていかれてしまいます。
 
「かつての風景」は、黒木さんの演出する作品になります。
 
「風景」という言葉がとても「らしい」作品になると思います。
 
風景をみているその人の後ろ姿を、「何を考えてるのかな…」とみている、そんな感じにピンとくるものがあれば、とても楽しめる、もとい、もってかれる作品ではないでしょうか。
 
「かつての風景」でご一緒するひとびと
tinörks
そして、生演奏をしていただくのはtinörks(ティノークス)さん
北欧エレクトロニカ、と説明をつけてはいますが、どんな音楽かといいますと。
 
たとえば、晴れた土曜日の午前中に、京阪の特急シートに座りながら聴くととても気持ちいい音楽です。
 
エレクトロニカといいつつ、トイピアノやメタロフォンを使ったアコースティックなぬくもりがある曲も多く、溶けていくような気持ちよさがあります。なんだったら本番中にお客さんが寝てしまう危惧すらあります。
 
一方で、薄暗い部屋で気だるく聴いていると、全然知らない物語の景色が頭に浮かんできて、物狂おしくなるような音楽でもあります。ちょっと疲れた時に聴こう、というよりは、「ここぞ」というタイミングでのめりこみたい音楽だ、と僕は思っています。ちょっと脱線してしまいますが、Webサイトがとても面白い(楽器紹介とか)ので、必見です。
 
仲谷萌
そしてまだ紹介をしていない最後の出演者が、仲谷萌さんです。
 
マイムを専門的にならっているひとではありませんが、おそらくこのひとが「かつての風景」の風景の中心になります。マイムを専門的にならっているひとではありませんが、だかろこそ、黒木さんの演出するマイム作品の特徴をもっとも捉えた演技をされます。
 
生身の存在感であること、素朴であること、透明であること。
だからこそ、見ているひとが気持ちを寄せてしまう。
という、素晴らしい役者さんです。
 
 
以上が、「かつての風景」に出演されるひとたちです。
これに僕を加えた俳優5人、演奏3人、計8人で上演されます。
 
ぜひ、見に来ていただければと思います。
 
よろしくお願いします。